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※1 京成関屋駅にて

※2 スカイライナーのロゴ

※3 客室概観

※4 足元備え付けのACコンセント

※5 運転台のモニタ

  京成電鉄AE形は、空港特急「スカイライナー」や朝夕の本線特急「モーニングライナー」「イブニングライナー」に充当される特急電車で、2010年7月17日の成田スカイアクセス線開業に併せて、スカイライナーが最高160km/hで運転されるのに伴い、2009年より8両編成8本が製造され、2019年10月26日のダイヤ改正においてスカイライナーが増発されるのに伴い、同年に1編成が製造された。

(奇数編成は日本車輌製、偶数編成は東急車輌製)

車両名は、空港アクセスへの原点回帰の意味を込めて、再び”AE形”と命名された。

 

 成田空港開業前から、都心から空港への速達性が必要視され、その具体策として1971年4月に成田新幹線基本計画が策定されたが、都心側経路の沿線住民からの反対や、過激派による成田空港建設反対運動の煽りを受け、1986年に頓挫した。そしてその代わりとして、1981年5月発足の「新東京国際空港アクセス関連高速鉄道調査委員会」が示した、A~C案を進めていくこととなった。この内のB案が、現在の成田スカイアクセス線の建設案である。

 

 2001年の時点で既に最高160km/hでの運転が決定しており、この頃からAE形の開発が始まった。車両のデザインは世界的に著名なデザイナーであり、プロデューサーでもある山本寛斎氏を中心として、コンセプトの段階から検討が始められた。

 

 外観のデザインコンセプトは「風」で、日本刀のようにエッジをきかせたシャープなフォルムにし、白色をベースとして藍色のメタリックを先頭部からのシャープエッジと腰部の2本のラインに塗り分けることで、この言葉がもつ「速さの象徴」や「運び手」、「旅へといざなうもの」という印象を結合して、「空港への最速の運び手」というにふさわしい外観が一体的に表現されている。特に藍色のメタリック塗装は、実際に色見本を地下駅に持ち込んで確認したり、AE100形などに塗装を複数回施したりして、あらゆる状況でも藍色に見えるよう、念入りに検証した。

 側面の”SKYLINER”というロゴは、頭文字の"S"を毛筆で描くことでスピード感を表現し、"i"の文字に日の丸をアイコンとして組み込むことで、日本を代表する空港特急「スカイライナー」の名を、世界に向けて発信している。

 

 内装のデザインコンセプトは「凛」で、開放感を与える高いドーム形天井と、客室扉などにガラス素材を採用することで、この言葉が持つ「きりりと引き締まったさま」「無駄なものを排しつつ、本質的なものを残す」という印象を演出しつつ、日本の「人への優しさ」や「パブリックな空間に対する知的な配慮」が統合的に表現されている。また、AE100形に比べシートピッチと座席幅、荷物スペースを拡大し、足元にACコンセントを設置することで、旅客に快適で利便性のある旅を提供しているほか、各車の入口に防犯カメラを設置することで、セキュリティ向上が図られている。

 そして、ミュージックホーンや車内BGM、放送前チャイムは、鉄道音楽を数多く手掛けている向谷実氏が作曲した。どれも非常に素晴らしい曲ばかりで、36分の短な旅に華を添えている。

 

 主電動機には、160km/hでの運転に対応するため、1時間定格出力175kW、回転数3155rpmの誘導電動機が採用された。駆動装置には、CFRP製の撓み板を使用したTD継手式平行カルダン駆動方式とFCD製の歯車装置を採用することで、低騒音化が図られている。

 制動装置には、回生ブレーキ付電気指令式電空併用ブレーキが採用された。VVVF制御と電空演算を行い、付随車遅れ込め方式にて空気ブレーキを補足させることで、回生ブレーキの利用率を向上させている。

 台車には、京成で初となるボルスタレス台車が採用されており、更に両先頭車には、国内の私鉄では初となるフルアクティブサスペンションを採用することで、高速運転時の揺動が軽減され、快適な乗り心地を提供している。また、基礎ブレーキ機構は、高速域でも安定したブレーキ力を確保するため、電動車には油圧キャリパー式ディスクブレーキが、付随車にはてこ式空圧ディスクブレーキと踏面ブレーキが採用されている。なお、この台車は、上野日暮里間の急曲線通過性能160km/hでの走行性能を両立させるため、2005年から試作台車を製作して、同社3500形3572Fに装着し、試験台で300km/h相当の高速回転試験を行ったほか、上野日暮里間で夜間試運転を繰り返し、十分な検証が行われた。

 主制御装置は、同社3000形を基本として容量を見直した、IGBTパルス幅変調インバータ方式で、1群で4台の主電動機を制御できる。これを、主電動機を搭載する偶数号車に2群設置し、1群6単位で開放可能なシステムとすることで、冗長性が図られている。また、トルク制御はベクトル制御方式とすることで、スムーズな加速と、空転・滑走時の迅速な再粘着を可能としている。

 

 車両情報統合装置には、AE形独自の”SLIMS”を採用しており、運転台にあるモニタでは、速度演算・走行距離演算・駅停車検知等、空調・自動放送・各表示等の制御、乗務員支援機能、出庫点検機能(運行情報設定・故障検知等)、車上試験機能、運転状況記録機能、自己診断機能、GPSによる時刻補正機能等の各機能を取り扱うことが出来る。また、車内LCDで流れるニュースや防犯カメラの映像等も統合的に制御している。

 

 2010年にはグッドデザイン賞(日本デザイン振興会)を、2011年には第54回ブルーリボン賞(鉄道友の会)をそれぞれ受賞。

 AE形は、京成のみならず日本が誇る鉄道車両である。

 

 

 

 

 

 

 

 

主要諸元

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